4月の1週間、私はニューヨークに滞在していました。私の照明がアメリカで製品化されるにあたり、メーカーとの打ち合わせを行うほか、アメリカで最も権威のあるインテリア雑誌『メトロポリス』と『インテリアデザイン』の取材を受けるためです。 私のデザインを製品化するのは、半世紀以上にわたって高品質の真鍮製照明器具を製作しているNORWELL社。伝統的なヨーロッパのデザインを取り入れた室内灯、外灯からバスルーム用の照明器具まで幅広いデザインを取り揃え、職人が一つひとつ手作業でつくる製品は、アメリカのみならず世界で高い評価を受けています。 さらにNORWELL社は、2年前にニューヨークの新進デザイナー、クリストファー・ポールマン氏を迎え、新シリーズの“ILEX”を発表。そのユニークで個性的なフォルムと豊富なバリエーションが好評を博し、リッツカールトン、フォーシーズンなどのアメリカの高級ホテルでも使用されています。 そしてこの夏、“ILEX”シリーズの2人目のデザイナーとして、ニューヨークで私がデザインした照明器具が発表されます。半世紀以上にわたる同社の歴史の中で、日本人デザイナーは初めてだそうです。 今回の照明器具のデザインにあたって考えたのが、「照明器具そのものの存在感をなくして、光の存在だけを感じられる照明にしたい」ということでした。照明器具のフォルムが主張し過ぎないように、デザインはごくシンプルに。光の出る方向や先の光の出る方向や先の見え方を考えながら、光を際立たせるデザインに徹しました。そして、室内にやわらかな光が灯るよう、乳白色のガラスを採用したのもこだわりのひとつです。 NORWELL社とのコラボレーションが生み出した、これまでにない斬新な照明。照明デザイナーとしてニューヨークデビューがもたらす、新たな展開に私自身期待しています。