人が心地よく暮らすためには環境や健康への配慮や機能はもちろんのこと、デザインの美しさという視覚的効果が大切です。機能性とデザイン美を両立させながら、石や土、木などの自然素材をどう融合させていくかが、家づくりにおけるこれからのテーマです。
大理石調や土壁風のビニール壁紙、合板のフローリング、コンクリートのレンガなど、フェイクがあふれている今の時代、私が目を向けているのは本物の素材です。
手間を惜しまず土を焼いたレンガを使い、珪藻土100%の土壁をつくり、床や家具には無垢材を使います。手間がかかることから敬遠するメーカーが多いこれらの素材を使うのは、“自然の素材が持つエネルギーを大切にしたい”という気持ちからです。珪藻土には空気浄化や防火効果、無垢材には調湿効果というように、自然の素材はそれぞれ優れた特性を持っています。この特性と、視覚的に心を癒すデザインが融合し、初めてそこに暮らす人が心地よい住まいが生まれるんです。
そして、今、私が注目しているのが断熱材のウールブレス。
ウールブレスは断熱、調湿、吸音、難燃などの効果を持つ上、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを含むVOC(揮発性有機化合物)を吸着し、健康的な室内環境づくりに寄与します。原料である羊毛は持続可能な資源で、廃棄してもやがて土に還ります。まさに人と環境にやさしい素材と言えるでしょうね。
床下や壁材に使われるこのウールブレスですが、私はカラーバリエーションを増やし、壁紙やカーペットなど目に見える箇所にも使うことを考えています。普段は隠してしまう断熱材を表に見せるという、まさに逆転の発想です。
住み心地のいい住まいは、自然の素材と優れたデザインから生まれます。これからも、自然の素材にこだわっていきたい。そう思っています。
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